カテゴリ: 著作権  タイトル: 二次的著作物上の著作権
更新2017-07-09 15:34:36

原著作物と2次的著作物の関係

2次的著作物とは、原著作物の本質的特徴を維持しながら、新たな創作性を付与された著作物を言います。この2次的著作物において、原著作物の本質的特徴が残存している以上、当該本質的特徴のうえに原著作物を客体とする著作権が及ぶとも考え得ます。一方、2次的著作物に残存しているのは本質的特徴に過ぎず、2次的著作物に内包された原著作物は観念的な存在に過ぎないものとも捉え得ます。実際には、原著作物の本質的特徴がそのまま読み取れる場合もあると考えられます。しかし、2次著作物に現れた原著作物の本質的特徴を観念的なものと捉えて、2次的著作物に現れた原著作物の本質的特徴を保護するのではなく、原著作物が2次的著作物の母体となっているという既成事実を重視して、観念的な原著作物の権利者であるという一点から、2次的著作物の著作者と同一の権利を及ぼしていくことになるという保護のアプローチを採用しているものと解すべきということもできます。

この点、平成 9年 7月17日最高裁第一小法廷判決(平4(オ)1443号著作権侵害差止等請求事件〔ポパイ漫画事件・上告審〕)は、以下のようにのべて、前者のアプローチを採ることを宣明しました。

 1 著作権法上の著作物は、「思想又は感情を創作的に表現したもの」(同法二条一項一号)とされており、一定の名称、容貌、役割等の特徴を有する登場人物が反復して描かれている一話完結形式の連載漫画においては、当該登場人物が描かれた各回の漫画それぞれが著作物に当たり、具体的な漫画を離れ、右登場人物のいわゆるキャラクターをもって著作物ということはできない。けだし、キャラクターといわれるものは、漫画の具体的表現から昇華した登場人物の人格ともいうべき抽象的概念であって、具体的表現そのものではなく、それ自体が思想又は感情を創作的に表現したものということができないからである。したがって、一話完結形式の連載漫画においては、著作権の侵害は各完結した漫画それぞれについて成立し得るものであり、著作権の侵害があるというためには連載漫画中のどの回の漫画についていえるのかを検討しなければならない。
 2 このような連載漫画においては、後続の漫画は、先行する漫画と基本的な発想、設定のほか、主人公を始めとする主要な登場人物の容貌、性格等の特徴を同じくし、これに新たな筋書を付するとともに、新たな登場人物を追加するなどして作成されるのが通常であって、このような場合には、後続の漫画は、先行する漫画を翻案したものということができるから、先行する漫画を原著作物とする二次的著作物と解される。そして、二次的著作物の著作権は、二次的著作物において新たに付与された創作的部分のみについて生じ、原著作物と共通しその実質を同じくする部分には生じないと解するのが相当である。けだし、二次的著作物が原著作物から独立した別個の著作物として著作権法上の保護を受けるのは、原著作物に新たな創作的要素が付与されているためであって(同法二条一項一一号参照)、二次的著作物のうち原著作物と共通する部分は、何ら新たな創作的要素を含むものではなく、別個の著作物として保護すべき理由がないからである。
 3 そうすると、著作権の保護期間は、各著作物ごとにそれぞれ独立して進行するものではあるが、後続の漫画に登場する人物が、先行する漫画に登場する人物と同一と認められる限り、当該登場人物については、最初に掲載された漫画の著作権の保護期間によるべきものであって、その保護期間が満了して著作権が消滅した場合には、後続の漫画の著作権の保護期間がいまだ満了していないとしても、もはや著作権を主張することができないものといわざるを得ない。 
このように、2次的著作物のうち、原著作物と共通する部分には原著作物の著作権がダイレクトに及び、共通しない部分に対しても、著作権法28条の権利が及ぶと解されます。では、著作権法28条の権利はどのような内容なのでしょうか。

著作権法28条の内容

著作権法28条は,「二次的著作物の原著作物の著作者は、当該二次的著作物の利用に関し、この款に規定する権利で当該二次的著作物の著作者が有するものと同一の種類の権利を専有する。」と定めます。

また,著作権法11条は,「二次的著作物に対するこの法律による保護は、その原著作物の著作者の権利に影響を及ぼさない。」と定めます。

この2つの規定の関係をどのように捉え,二次的著作物に成立する著作権をどのように考えていけばよいのでしょうか。

まず,原著作物については,原著作物成立の時点で著作権が発生し,二次的著作物が成立した前後で,原著作物の著作者が原著作物に対して有する著作権は何らの変動を受けないことになります(著作権法11条)。

したがって,二次的著作物成立後も,原著作物の侵害に対しては差し止めや損害賠償を請求できますし,原著作物の利用許諾契約などを締結することも当然自由です。

これに対して,二次的著作物においても,原著作物の著作者は,二次的著作物の権利者と同一の種類の権利を有することになります。

この同一の種類の権利を専有するという規定の意義については,2つの側面に分けて考える必要があります。2つの側面とは,「権利の種類」と「権利が及ぶ範囲」です。

「権利の種類」については,原著作物が小説であった場合に,小説にはたとえば,頒布権が認められません。著作権法26条1項が映画の著作物に限定して頒布権を定めているからです。そこで,小説を原著作物とする映画の二次的著作物について,原著作者も本来原著作物上に専有しない頒布権を二次的著作物の上に専有することになります。著作権法28条により原著作者の二次的著作物の上に成立する著作権の種類が拡張されていることになります。

次に,争いがあるのが,原著作者が二次的著作物に対して有する「権利が及ぶ範囲」の問題です。つまり,二次的著作物は原著作物に依拠してその本質的特徴を残していることになりますが,二次的著作物から感得できる原著作物の本質的特徴部分についてのみ,権利を専有しているのか,これをこえて,二次的著作物が新たに著作物に付与した創作性の部分にも原著作者の権利が及ぶのかが,問題となります。

最高裁判所(最高裁判所判例平成13年10月25日キャンディキャンディ事件上告審)は,この点について,「本件連載漫画は、被上告人が各回ごとの具体的なストーリーを創作し、これを四〇〇字詰め原稿用紙三〇枚から五〇枚程度の小説形式の原稿にし、上告人において、漫画化に当たって使用できないと思われる部分を除き、おおむねその原稿に依拠して漫画を作成するという手順を繰り返すことにより制作されたというのである。この事実関係によれば、本件連載漫画は被上告人作成の原稿を原著作物とする二次的著作物であるということができるから、被上告人は、本件連載漫画について原著作者の権利を有するものというべきである。そして、二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し、原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し、上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになるのであるから、上告人の権利は上告人と被上告人の合意によらなければ行使することができないと解される。したがって、被上告人は、上告人が本件連載漫画の主人公キャンディを描いた本件原画を合意によることなく作成し、複製し、又は配布することの差止めを求めることができるというべきである。」と述べています。

このように,最高裁判所は,「二次的著作物である本件連載漫画の利用に関し、原著作物の著作者である被上告人は本件連載漫画の著作者である上告人が有するものと同一の種類の権利を専有し、上告人の権利と被上告人の権利とが併存することになる。」と述べています。

また,同事件控訴審(東京高裁判例平成12年3月30日)も,「原著作物の著作権者は,結果として,二次的著作物の利用に関して,二次的著作物の著作者と同じ内容の権利を有することになることが明らか。」と述べています。

したがって,判例は現在「同一の種類の権利を専有する」とは,二次的著作物の上に原著作物の著作権者の権利と,二次的著作物の著作権者の同一の内容の権利が二次的著作物全体について併存するものと解しているように捉えられます。

判例の捉え方によれば,著作権法28条によって,「権利の種類」のみならず「権利が及ぶ範囲」も二次的著作物全体に拡張されていると考えるのが自然とも考えられます。

反対に,原著作者が創作性を有しない二次的著作物のオリジナルと言える部分にも,原著作者の権利が拡張されることには,根強い反対論もあります。反対意見にしたがえば,二次的著作物のオリジナル部分には,原著作者の権利が及ばないことになります。例えば,キャンディキャンディ事件における結論も真逆となるとの指摘もあります。

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