カテゴリ: 知的財産権 タイトル: 知的財産権に関する事件の控訴審における管轄
更新2018-03-10 14:23:43

知的財産事件の控訴審については、特別の定めがあります。すなわち、知的財産高等裁判所設置法2条柱書は、「東京高等裁判所の管轄に属する事件のうち…知的財産に関する事件を取り扱わせるため…東京高等裁判所に知的財産高等裁判所を設ける」として、東京高等裁判所管轄に属する知的財産に関する事件については、知的財産高等裁判所が取り扱うことを宣明しています。
第二条 東京高等裁判所の管轄に属する事件のうち、次に掲げる知的財産に関する事件を取り扱わせるため、裁判所法(昭和二十二年法律第五十九号)第二十二条第一項の規定にかかわらず、特別の支部として、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所を設ける。 一 特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、著作者の権利、出版権、著作隣接権若しくは育成者権に関する訴え又は不正競争(不正競争防止法(平成五年法律第四十七号)第二条第一項に規定する不正競争をいう。)による営業上の利益の侵害に係る訴えについて地方裁判所が第一審としてした終局判決に対する控訴に係る訴訟事件であってその審理に専門的な知見を要するもの 二 特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)第百七十八条第一項の訴え、実用新案法(昭和三十四年法律第百二十三号)第四十七条第一項の訴え、意匠法(昭和三十四年法律第百二十五号)第五十九条第一項の訴え又は商標法(昭和三十四年法律第百二十七号)第六十三条第一項(同法第六十八条第五項において準用する場合を含む。)の訴えに係る訴訟事件 三 前二号に掲げるもののほか、主要な争点の審理に知的財産に関する専門的な知見を要する事件 四 第一号若しくは第二号に掲げる訴訟事件又は前号に掲げる事件で訴訟事件であるものと口頭弁論を併合して審理されるべき訴訟事件 |
高等裁判所の管轄については、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律別表5に定めがあります。すなわち、右記1都10県、東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,山梨県,長野県,新潟県に所在する地方裁判所に提起された第一審に対する知的財産権に関する控訴審事件は、知的財産権高等裁判所が取り扱います。
また、特許権等に関する訴え(特許権、実用新案権、回路配置利用権、プログラムの著作物についての著作者の権利に関する訴え)については、東京地方裁判所乃至は大阪地方裁判所が専属管轄を有し(民事訴訟法6条1項)、さらに、そのうちの大阪地方裁判所専属事件の控訴事件における管轄については、原則的に東京高等裁判所が専属管轄とされています(民事訴訟法6条3項)。
よって、特許権等に関する訴えの控訴審は、全国的に知財高裁が専属的に管轄します。
ただし、東京高等裁判所から、大阪高等裁判所に裁量移送がされる場合があります(民事訴訟法20条の2第2項)。また、1審の段階で裁量移送(同条1項)されたケースでは、移送後の地方裁判所を管轄する高等裁判所が、控訴審の専属管轄を有すると考えられます。
以上から、右記1都10県、東京都,神奈川県,埼玉県,千葉県,茨城県,栃木県,群馬県,静岡県,山梨県,長野県,新潟県以外の地域における知的財産に関する事件のうち、特許権等に関する訴えに含まれないものについては、一審について東京地方裁判所に提訴しなかったものについて、東京高等裁判所以外の高等裁判所に控訴審の管轄権が認められます。こうした事件については、例えば大阪高等裁判所においては知的財産集中部が存在します。
また、専門的知見を必ずしも要求されない特許権等に関する訴え以外の知財事件について、一審において東京高裁管内以外の地方裁判所を選択した場合、控訴審において知的財産高等裁判所に係属することは、原則的にできないものと考えられます。一審裁判所の土地管轄を選択できる場合は、この点も踏まえて裁判所を選択すべきことになります。なお、特許権等に関する訴えについても、一審で裁量移送(民事訴訟法20条の2第1項)がされた事件については、移送後の一審裁判所所在地を管轄する高等裁判所が控訴審の管轄をもつものと考えられることは前述の通りです。
Lawyer/弁護士紹介
Legal counsel/法律相談
Office/事務所
Fee /料金
カテゴリ別全記事一覧
事務所紹介
特許法
著作権
著作権の内容
◆複製権
◆展示権
◆二次的著作物上の著作権
◆公衆送信権
◆頒布権・譲渡権・貸与権
◆上演権・演奏権・口述権
◆上映権
◆送信可能化権における情報の範囲
◆翻案権
◆リンクと不法行為、著作権侵害の諸問題
◆映画著作物における頒布権の国際消尽
◆埋込コンテンツと公衆伝達権
◆送信可能化権
著作物
◆音楽の著作物
◆応用美術の著作物性
◆データベースの著作物とは
◆二次的著作物とは
◆実用品の著作物性~平成27年4月14日知財高裁判決(平成26年(ネ)10063号)解説
◆言語の著作物
◆映画の著作物
◆プログラムの著作物
◆実用品の著作物性~知財高裁平成28年10月13日判決(平成28年(ネ)第10059号)解説
◆訴訟を巡り創作される著作物と著作権法の規定
ICT著作権法務
◆RDBMSの著作物性等
◆リンクと著作権
◆URLの意味とリンク及び公衆送信権
◆リンクと著作権GS Media BV v Sanoma Media Netherlands BV and Othersの本邦著作権法解釈に与える影響
著作権侵害
◆対象の著作物性
◆著作権侵害に基づく差止の仮処分命令
◆対象の著作物該当性①「思想又は感情」
◆対象の著作物性②「表現したもの」
◆対象の著作物該当性③「創作的な表現」
◆著作権等侵害に基づく損害賠償請求訴訟における損害額について
◆みなし侵害行為
◆公衆送信権・送信可能化権の侵害主体確定の前提となる送信客体の捉え方について
◆著作物の(同一性・)類似性と依拠性
著作権全般
◆著作権法と意匠法などの棲み分け
◆著作権を初めとする知的財産権法務に重点を置いている法律事務所です
◆著作権保護の理念
◆著作権法にフェアユース規定はありますか
◆著作権、著作者人格権の帰属
◆著作権は譲渡できますか?
◆共有著作権の行使
◆著作権法
著作権業務内容
◆著作権法務
◆著作権登録
◆著作権訴訟
◆著作権契約
◆著作権警告書・回答書
◆著作権刑事
◆著作権遺言相続
◆デジタル著作権法務
◆著作権侵害対応
◆著作権侵害防御
◆著作権顧問契約
◆インターネット上の著作権侵害
商標法
ICT法務
業務案内
◆ICTコンテンツ、ウェブサイト法務取扱法律事務所
◆インターネット法務の概要
◆著作権を初めとする知的財産権侵害に関する法律業務の流れ
◆コンテンツ総合支援法務サービス・コンテンツシールド
◆ICT分野・コンテンツ制作分野を法的に支援します
◆インターネット上で生じる紛争類型と弁護士が代理できる業務
◆2ちゃんねる書き込みに対する対応
知的財産権
業務案内
◆ICTコンテンツ、ウェブサイト法務取扱法律事務所
◆インターネット法務の概要
◆著作権を初めとする知的財産権侵害に関する法律業務の流れ
◆コンテンツ総合支援法務サービス・コンテンツシールド
◆ICT分野・コンテンツ制作分野を法的に支援します
◆インターネット上で生じる紛争類型と弁護士が代理できる業務
◆2ちゃんねる書き込みに対する対応