カテゴリ: 特許法  タイトル: 無効審判
更新2016-09-26 12:27:05

無効審判

いったん付与された特許に瑕疵がある場合、当該特許を遡及的に消滅させるべく、特許無効審判制度が設けられています。無効事由と拒絶事由は大部分共通します。しかし、特許成立後に生じる無効事由は当然、拒絶事由とされていません。また、審査手続の迅速、円滑に資する拒絶事由は、無効事由とされません。無効審判は当事者系審判であり、当事者対立構造を採ります。対立構造の元で、より充実した審理が期待されます。無効審判においては、複数の請求項ごとに、単独で無効審判が可能であり、複数の請求項に対する無効審判のうち、一部を取り下げることもできます。無効審判は特許権消滅後も特許権存続中の侵害に対する損害賠償に対して、請求することが出来ます。審判は、特許の無効を認める請求認容審決と、無効を認めない請求棄却審決があります。複数請求項の一部を無効とする一部認容審決も、あります。無効審決により、特許は効力発生時に遡って消滅します。もっとも、後発的無効事由においては、無効事由が生じたときにさかのぼります。なお、現在は、特許権侵害訴訟において、抗弁として無効主張を行うことが可能となっています(キルビー抗弁)。

無効審判の当事者

①審判請求人
 無効審判は、何人でも請求できます(123条2項本文)。無効の特許を存続させておくことは、公益に反するため、法は何人にも請求権を認めました。もっとも、共同出願違反、特許を受ける権利の侵害という、個人の法益を保護する規定の違反については、法益の帰属する利害関係人のみが、請求適格を有することになります(123条2項ただし書)。実施権者については、特許が遡及的に無効となれば、それまでに支払った実施料を、不当利得返還請求できます。したがって、実施権者には、特許無効審判を請求する利益があり、原則として、不争義務を負いません。例外的に、特約により不争義務が認められる場合、無効審判請求が信義則に反する場合に、請求人適格を失うと解されています。利害関係人の解釈に、競業者などを含めて考える見解もあります。しかし、共同出願違反、特許を受ける権利の侵害の場合に限り、利害関係人とされる趣旨と、適合しないといえるでしょう。
②被請求人
 無効審判の被請求人は、特許権者です。特許権が共有にかかる場合、全員を共同被請求人としなければなりません。もっとも、請求が認められ、無効審決がされた場合、無効審決取消訴訟を提起することは、単独で可能と解されています(ETNIES商標事件参照)。

一事不再理効

何人も、特許無効審決(成立又は不成立審決)があった場合は、同一の事実および同一の証拠に基づいて無効審決を請求できません(167条)。確定審決に、対世的な一事不再理効を認めていることになります。基準時は、確定審決の登録時であり、これより前に請求がされていた場合、請求は、却下されないことになります。
①客観的範囲
 一時不再理効が及ぶ客観的範囲は、同一の事実および同一の証拠の範囲です。したがって、同一請求権者でも、異なる事実、異なる証拠に基づいて、特許無効審判を請求することが、許されることになります。
②主観的範囲
 一事不再理効は、対世的に生じることになります。その基準時は、確定審決の登録時です。そして、不成立審決の確定後に、同一事実、同一証拠による特許無効審決が確定した場合、特許権はさかのぼって無効となります。したがって、法的効果に混乱は生じないことになります。これは、一部の審決が確定しても、他の審決が訴訟継続した場合にも同じく解することと、同様の考え方です(最判平成12年1月27日-クロム酸鉛顔料およびその製法事件)。

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